いにしえの知らない人の猫の鼻
我思う無数の人の一人かな
わらを握り糸にすがり尚落ちる
白い反射褐色の蝶が舞い降りる

じっと聞く偉大で異常な蝉の声
ゆっくりと木々と蝉の上を雲が通る
指で押す焼けた肌に風がからむ
風と波は海が消えるまで砂を叩く

困ったねえ三途の川からもらい水
病だれ蝉蝉蝉の座禅かな
椅子を出し日向に座る気持ち良さ
背に熱射腹には風の心地よさ

空青く風強く吹き雲光る
コアラ飛びカンガルー飛びユーカリ飛ぶ
海辺にて赤い花びら摩り潰す
水滴の皮膚をなぞりて汐の味

柔らかく冷たい皮膚の浜の夕
凍る雪と灼熱の砂は同じかな
ジージーとカラスがかじるアブラ蝉
F#G#F#豆腐屋の笛遠ざかる

目白来る無花果の花薄黄緑
風が抜け熱の反射が渦を巻く
黒陰に葉先が光る気持ち良さ
薄青き夕暮れを流れる黒い雲

黙祷！マリア蝉鳴き風は無し
夏の日のカナカナカナカナ走る風
サルスベリ昔の寺の白い壁
光る雲静かで暗い壷の中